
「今買う理由」をつくる!リテールメディアとポイントキャンペーンの効果的な活用法
小売企業が保有する膨大な購買データが、広告主にとって新たな武器となっています。リテールメディアは、そのデータを活かして精度の高いターゲティングと成果につながるコミュニケーションを可能にする手段です。本記事では、リテールメディアの可能性と、データドリブンなマーケティング戦略への活用について深掘りします。
目次[非表示]
- 1.注目されるリテールメディア
- 1.1.リテールメディアとは
- 1.2.リテールメディア広告の市場規模
- 1.3.注目されている背景
- 1.3.1. (1)広告効果が可視化できる
- 1.3.2.(2)オフラインデータの活用
- 1.3.3.(3)メーカーの広告投資先の変化
- 1.4.OMO・オムニチャネルとの違い
- 2.どこで・どう出す?リテールメディア広告の種類
- 2.1.オンライン施策
- 2.1.1.(1)オンサイト広告
- 2.1.2.(2)オフサイト広告
- 2.2.オフライン施策
- 3.リテールメディアのメリット
- 3.1.オフラインデータの活用
- 3.2.Cookie規制の影響を受けにくい
- 3.3.広告収益を得られる
- 4.リテールメディア×会員証・ポイントキャンペーンが販促効果を高める理由
- 4.1.来店・購買データの活用
- 4.2.ポイント還元による「今買う」動機づけ
- 4.3.スムーズな購買導線の構築
- 5.リテールメディア施策を支えるなら「VALUE GATE」
- 6.リテール業界の施策事例
- 7.まとめ
注目されるリテールメディア
マーケティング業界や小売業界で、注目を集めている「リテールメディア」。広告の投資先がテレビや新聞などのマス広告から移りつつある中で、小売企業が新たな収益源としても活用を進めています。
リテールメディアとは
リテールメディアとは、小売(リテール)企業が保有する顧客情報に対して、自社メディア(ECサイトやアプリ、LINE公式アカウント、店頭サイネージなど)から広告を配信する仕組みです。
これまではメーカーが商品を宣伝する際、テレビCMや雑誌広告などの「マス広告」を中心に投資してきましたが、今では顧客との接点が強い小売が広告の新たな場として注目されています。「買い物のデータ」や「顧客との直接の接点」を持つ小売企業が、広告の発信地になるという点が特徴です。
従来の広告と異なる点は、買う場所と広告が同じ場所(ECサイト内や、店内など)にあり、より消費者の行動に直結しやすいところです。
例:Amazon 広告主(メーカー): P&G、資生堂など |
このように、Amazonは自社のECサイトを広告枠として活用し、広告収益を得ると同時に、メーカー側も商品を目立たせることができます。リテールメディアは、購買データに基づいた精度の高い広告配信ができる点でも強みを持っています。
リテールメディア広告の市場規模
出典:株式会社CARTA HOLDINGS「リテールメディア広告市場規模推計・予測 2022年~2028年」
リテールメディア広告市場は、2024年の約4,692億円から2027年には約1兆円へと、およそ2.5倍に拡大すると予想されています。ここ数年で成長が加速しており、注目度が高まっています。
市場の中心は引き続きEC事業者(Amazonや楽天など)ですが、店舗事業者(スーパーやドラッグストアなど)も2024年から2027年にかけて3倍以上に成長する見込みです。
このように、リテールメディアはECだけでなくリアル店舗も活用した広告チャネルとして、今後さらに拡大していくことが期待されています。
注目されている背景
リテールメディアが注目されるようになった背景には、主に以下の3つの理由があります。
(1)広告効果が可視化できる
従来のマス広告では、「実際に広告を見た人が購買行動に至ったかどうか」を正確に測定するのは困難でした。しかしリテールメディアは、小売企業が管理する会員情報や購買履歴、Web上での行動履歴(いわゆるファーストパーティデータ)と広告の接触データを組み合わせることが可能です。
例えば、「〇月〇日にアプリ内の広告をクリックした会員が、数日後に対象商品を購入した」といった一連の流れを把握することができ、広告接触から購買までを可視化できます。これにより、広告の費用対効果を高い精度で測定でき、効果の高い広告施策だけに投資を集中する判断も可能になります。
(2)オフラインデータの活用
リテールメディアの強みは、リアル店舗の購買データも一体的に活用できることです。例えば、店舗でのPOSデータや会員証の提示履歴、紙クーポンの利用情報など、これまでオンライン広告との連携が難しかった情報を紐づけることで、広告施策に反映できるようになります。
実店舗でよく買い物をしているユーザーに対してアプリやLINEで広告を出したり、オンライン広告を見た人が実店舗で購入したかをトラッキングしたりすることが可能です。オンラインとオフラインをまたいだ広告配信・効果測定が実現することで、一貫性のあるマーケティングが可能になります。
(3)メーカーの広告投資先の変化
従来のメーカーの広告投資先は、テレビCMや雑誌、といったマス媒体が主流でした。しかし、近年では「広告を見てもらうこと」から「購買につなげること」へと目的が変化しており、行動データと結びついた広告配信を求めるようになっています。
その中で、リテールメディアは、広告接触から購買までを一貫して追える媒体として評価が高く、メーカーの広告予算がリテールメディアへとシフトしてきています。
一方、小売企業にとっても、広告枠の販売という新たなビジネスモデルが生まれたことで、広告収入を収益源として確保できるというメリットがあり、両社にとって「win-win」の関係が築かれています。
OMO・オムニチャネルとの違い
リテールメディアと混同されやすいのが「OMO」や「オムニチャネル」です。それぞれの違いを整理してご紹介します。
用語 |
視点 |
概要 |
オムニチャネル |
小売企業 |
複数の販売チャネルを統合し、一貫した顧客対応を目指す |
OMO |
顧客 |
オンラインとオフラインの垣根をなくし、体験を最適化する |
リテールメディア |
小売企業×メーカー(広告主) |
小売企業がメディア化し、メーカーが購買直結の広告を打てる |
オムニチャネルは小売企業、OMOは顧客視点であるのに対し、リテールメディアは、小売企業とメーカーが満足するビジネスモデルです。
どこで・どう出す?リテールメディア広告の種類
リテールメディアは、広告が表示される場所(チャネル)や施策の実施方法によって大きく2つに分類されます。
オンライン施策
オンライン施策は、デジタル上で展開されるリテールメディア広告のことを指し、大きく「オンサイト広告」と「オフサイト広告」に分かれます。
オンライン施策 |
オフライン施策 |
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オンサイト広告 |
オフサイト広告 |
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自社が保有する顧客情報を活用して、自社独自のWebサイトやアプリなどへの広告掲載 |
自社が保有する顧客情報を活用して、他社サイトに広告掲載 |
店内へ広告掲載 |
・ECサイト内広告 |
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(1)オンサイト広告
小売企業が自社で保有・運営するプラットフォーム(ECサイトやアプリ、LINE公式アカウント)上に表示される広告を指します。メーカーは、ここに自社商品の広告を出稿することで、買い物中の顧客に自然な形で訴求することができます。
例えば、化粧品メーカーがドラッグストアのアプリ上にバナー広告を掲載し、新商品を紹介するケースなどが該当します。この広告は、小売企業が保有する購買履歴や会員属性データを活用して配信されるため、関心度の高いユーザーに対して、より効果的にリーチすることが可能です。
(2)オフサイト広告
小売企業が保有するデータを活用しつつ、自社外のデジタルチャネル(検索エンジンやSNSなど)に広告を配信する施策です。メーカーは、小売企業と連携して配信を行い、自社商品のプロモーションを広範囲に展開します。例えば、飲料メーカーがコンビニエンスストアの会員データを活用し、エナジードリンク購入者に向けた広告をYouTubeで配信するといった方法です。
オフサイト広告では、リテールメディアの会員情報や購買データを活用しながら、外部媒体の持つ配信力を活かせるという強みがあります。
オフライン施策
オフライン施策とは、実店舗に来店した顧客に対して、リアルな場で直接訴求するインストア広告を指します。スーパーのレジ前に設置されたサイネージで流れる動画広告や、店内ポスターに掲載された「LINE友だち登録でポイント付与」といったキャンペーンが該当します。
インストア広告の強みは、買う直前のタイミングで接触できる点です。すでに買い物モードに入っている顧客に対して直接訴求できるため、即時的な購買促進につながりやすくなります。
リテールメディアのメリット
リテールメディアを活用すると、下記のようなメリットがあります。
視点 |
メリット |
小売企業 |
・ 活用しきれていなかったオフラインデータを活用し、販路拡大・売上向上が見込める |
メーカー(広告主) |
・小売企業が保有する会員データや購買履歴を使って、精度の高いターゲティングが可能 |
顧客 |
・興味・関心に合う広告のみが表示されることで、不要な情報が減りストレスが軽減 |
三方のメリットを踏まえた上で、小売企業がリテールメディアを活用することで得られるメリットをより詳しく紹介します。
オフラインデータの活用
これまで店舗のPOSデータやポイントカード、会員証の利用履歴といったオフラインで収集された情報は、在庫管理や販促に活用されていました。しかしリテールメディアを活用することで、オフラインの購買データを広告配信に反映できるようになり、マーケティングの質が向上します。
例えば、特定の商品を購入した履歴がある顧客に対して、アプリやLINEで広告配信を行うことで、関連商品の購入を促すことができ、購入率の向上にもつながります。
Cookie規制の影響を受けにくい
現在、世界的に進むプライバシー保護の流れを受けて、サードパーティCookieの利用が制限されつつあります。GoogleもChromeでのサードパーティCookie廃止を発表しており、Web広告のターゲティング手法が大きく変化しています。
このような状況の中で、リテールメディアは自社で取得した「ファーストパーティデータ」を活用できる強みを持っています。顧客の購買履歴や会員情報、行動データを基に、プライバシーを守りながら精度の高い広告配信が可能です。小売企業にとっては、Cookie規制が進む中でも、安定したターゲティング施策を維持できる手段となります。
広告収益を得られる
これまで小売企業は、商品を仕入れて販売することで利益を得ていましたが、リテールメディアの導入により、広告枠の販売という新たな収益モデルを確立することができます。
例えば、自社アプリのトップページやECサイトの検索結果に「スポンサー枠」を設け、メーカーに広告掲載料を請求することで、広告収入を得ることが可能になります。また、実店舗内でもデジタルサイネージなどを活用して、インストア広告枠を提供することができます。このように、商品の売上以外にも収益源を確保できることが、リテールメディアの魅力です。特に利益率の低い業態においては、収益構造を改善するための手段として注目されています。
リテールメディア×会員証・ポイントキャンペーンが販促効果を高める理由
リテールメディアの強みを引き出すには、会員証やポイントキャンペーンの活用が有効です。これらを掛け合わせることで、広告の効果検証だけでなく、購買意欲の刺激や購買導線の最適化まで一貫して実現できるようになります。
来店・購買データの活用
会員証の提示を促すことで、「誰が・いつ・どこで・何を買ったのか」といった詳細な購買データを取得できます。これにより、広告接触との因果関係が可視化され、広告を見た人が実際に何を買ったのかまで追跡することが可能になります。
例えば「LINE公式アカウントで配信した広告を見たユーザーが、数日後に店舗で会員証を提示して購入した」という一連の流れを把握することで、広告の成果を数値化し、PDCAを回しやすくなるのです。
ポイント還元による「今買う」動機づけ
「今だけ○倍ポイント」「週末限定ポイントアップ」などのキャンペーンは、顧客が商品を購入する際の後押しになります。価格訴求に頼らずに購買を促せるため、利益率を維持しながら販促効果を高められるといったメリットがあります。
さらにポイントを付与することで、再来店のきっかけにもなり、結果として顧客満足度の向上に貢献します。
スムーズな購買導線の構築
リテールメディアと会員証・ポイントキャンペーンを掛け合わせることで、広告を見る→来店する→会員証を提示して買う→ポイントが貯まるというスムーズな購買導線を構築できます。
例えば、アプリ内広告でキャンペーンを告知し、LINEでリマインド、店頭ではポスターと連動したQRコードで会員証を表示することで、自然な流れで購買へと誘導できます。
また、購買行動の一流れをデジタルで記録・分析できるため、最適なタイミングで最適なメッセージを届けるOne to Oneマーケティングも実現できます。
リテールメディア施策を支えるなら「VALUE GATE」
トリニティのポイントサービス「VALUE GATE」は、リテールメディアと組み合わせることで、より一貫性のある顧客体験と販促効果の向上をサポートします。例えば、店頭やLINEで配信した情報に反応したお客様の購買履歴を、VALUE GATEを通じて可視化することで、広告の効果測定や次回施策への活用がスムーズに行えます。
また、既存のPOS・EC・会員管理システムとAPI連携が可能なため、媒体・チャネルをまたいだ「認知→来店→購買→再来店」の導線設計がしやすく、複数ブランドや店舗をまたいだポイントの運用にも対応可能です。
「LINE広告を見た人だけにポイント付与したい」「広告を見て来店した人の反応を分析したい」といったニーズにもお応えします。
お気軽にご相談ください。
リテール業界の施策事例
リテールメディアは業種を問わず、多様な小売業態で効果的に活用されています。ここでは、アパレル、スーパーマーケット、ドラッグストアにおける活用例を紹介します。
アイテム×アプリバナー配信(アパレルショップ)
ここでいうアパレルショップとは、ユニクロのように自社で商品を製造する「メーカー」ではなく、BEAMSのように仕入れた商品を自社の店舗やECサイトで販売し、アプリやLINEアカウントなどを自ら運営している小売事業者を指します。
アパレル業界では、季節ごとの新作や限定コレクションをどう見せていくかが販促の鍵になります。小売側は、自社アプリ内のバナー広告やLINEを活用して、新作アイテムの告知やポイントキャンペーンを行い、顧客の関心を高めていきます。
さらに、扱っているブランドや商品のメーカーが広告主となって、小売のアプリ内に広告を出稿するケースもあります。このように、小売企業が広告枠を提供し、メーカーが「自社商品を目立たせたい」と出稿することで、リテールメディアとしての仕組みが成り立ちます。
メーカーにとっては「購買の直前」にアプローチでき、小売にとっては広告収益が得られるという、双方にメリットのある形です。
新商品×デジタルサイネージ(スーパーマーケット)
例えばスーパーマーケットでは、店頭のデジタルサイネージを活用し、新商品やおすすめ商品の情報をタイムリーに発信しています。こうしたサイネージ広告も、リテールメディアの一部です。
ここで流れる商品紹介は、メーカーが広告費を出して出稿しているケースが多いです。例えば、「○○メーカーのヨーグルト新商品」や「△△メーカーの鍋つゆ」のプロモーション動画が、サイネージに流れていたとしたら、それはメーカーが小売側に広告を出稿している形です。
つまり小売企業は、売り場という顧客との接点を広告媒体に変え、メーカーは購買直前の顧客に自社商品を訴求できます。顧客に即時的な影響が期待できるため、キャンペーンや新商品の認知・購買促進に有効です。
商品×LINE配信(ドラッグストア)
ドラッグストアでは、季節性のある医薬品や衛生用品を中心に、LINEを活用したリテールメディア施策があります。例えば、花粉症シーズンには、LINE公式アカウントで「花粉症特集」のお知らせを配信し、マスクや目薬、内服薬などの特集ページへと誘導することで、購買意欲を高めます。
さらに、前年に花粉症対策商品を購入した顧客をセグメントして配信するなど、購買履歴を活かしたパーソナライズも可能です。
こうした施策には、製薬会社が広告主として関与することも多く、LINE上のプロモーションバナーや動画広告を出稿するケースがあります。販促費を負担する代わりに、購買に近いタイミングで自社商品を効果的に訴求できるため、メーカー側にも大きなメリットがあります。
まとめ
リテールメディアは、小売企業が保有する顧客情報を活用し、店舗やアプリ、ECサイト、LINEなどの「顧客接点」を広告媒体とする、小売企業・メーカー(広告主)・顧客の三方にメリットをもたらす販促手法です。
購買データを基にした精度の高いターゲティング、会員証やポイントキャンペーンと連動した即時的な効果測定、そしてオフライン・オンラインを横断した顧客体験により、販促方法を広げてくれます。
自社のチャネルや会員データを活かしたマーケティング施策として、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。