【ポイントサービス導入ガイド】基本的な仕組みと導入手順を徹底解説!
目次[非表示]
- 1.ポイントサービスとは?
- 1.1.ポイントサービスの基本的な仕組み
- 1.2.ポイントサービス市場について
- 1.3.ポイントサービスの種類
- 2.ポイントサービス導入のメリット
- 2.1.来店促進
- 2.2.顧客情報の活用
- 2.3.LTV(顧客生涯価値)の向上
- 2.4.他社との差別化
- 3.ポイントサービスをはじめるには
- 3.1.ポイントサービスの目的を明確にする
- 3.2.ポイント付与ルールなどの運用内容を決める
- 3.2.1.ポイントの還元レート
- 3.2.2.ポイント有効期限
- 3.2.3.ポイント利用方法
- 3.2.4.ポイントカード(会員証)について
- 3.2.5.会員ランク設定
- 3.3.必要なシステムと設備を選定する
- 3.4.店舗スタッフへの周知と教育
- 4.ポイントサービスの具体的な運用イメージ
- 4.1.会計時のポイント付与・利用の流れ
- 4.2.取得した顧客データの管理と活用
- 4.3.キャンペーンやクーポンなどの実施
- 4.4.定期的な効果測定と改善
- 5.ポイントサービス導入の注意点
- 5.1.一度始めるとすぐにはやめられない
- 5.2.過剰なポイント付与による収益悪化のリスク
- 5.3.顧客データのセキュリティ対策
- 6.まとめ
ポイントサービスとは?
ポイントサービスの基本的な仕組み
ポイントサービスとは、顧客が商品やサービスを購入するたびにポイントが付与され、そのポイントを後日割引や特典として利用できる仕組みです。正式には「ポイントプログラム」と呼ばれます。たとえば、スーパーマーケットで買い物をした場合、購入金額の1%分(購入金額1000円の場合ポイントは10ポイント)がポイントとして還元され、次回以降の支払いに1ポイント1円として使えるようになるケースが一般的です。これにより、顧客はポイントを貯めるために再度来店する機会が増え、店舗側は顧客のリピート率向上につなげることができます。
さらに、ポイントシステム上に顧客の購買履歴がデータとして蓄積されるため、店舗側は顧客の好みや購買傾向に合ったクーポンやプロモーションを実施しやすくなります。
ポイントサービスを運用する企業側が把握しておくべきことの一つに、「ポイント原資」という言葉があります。ポイント原資とは、顧客にポイントを還元するために企業側が負担するコストのことです。例えば、顧客が購入金額の1%をポイントとして受け取れるプログラムがある場合、1000円の購入に対して10円分のポイントが付与されます。この10円分は顧客が次回使用するまで企業側の負債(繰延収益)として計上され、ポイントが実際に使われた時点で収益として認識されます。還元率が高いほど原資負担が大きくなり、収益への影響も大きくなるため、原資の設定は慎重に行う必要があります。原資をうまく管理することで、利益を確保しつつ顧客にとって魅力的なサービスを提供することが可能になります。
ポイントサービス市場について
日本国内におけるポイントサービス市場は、2023年度の約2.7兆円から2024年度には約2.8兆円へと増加が見込まれています。(※1)この成長の背景には、キャッシュレス決済の普及と、複数のポイントサービスが統合された「ポイント経済圏」の拡大があり、消費者は特定のサービスに集中する傾向が強まっています。
また、近年の調査によれば、約9割の消費者がポイントサービスが店舗やサービス利用に「好影響」を与えると回答しています。(※2)特に、6割以上が「ポイントを意識して店舗やサービスを選ぶ」と答え、ポイントが貯まることに対して嬉しいと感じる人も2割強に上ります。このように、ポイントサービスは消費者の行動に大きな影響を与えるため、店舗側はポイントサービスを導入し、うまく活用することで、より多くの顧客に選ばれる可能性が高まります。ポイント制度を取り入れることは、消費者にとって嬉しい要素となり、競争力を高める助けになるでしょう。
(※)1 矢野経済研究所「2024年版 ポイントサービス・ポイントカード市場の動向と展望」
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3605
(※)2 ジー・プラン「ポイントサービスに関する市場調査(2024)」
https://www.g-plan.net/service/blog/c201#66440f35cf0a603b33cc34c6-1715763593213
ポイントサービスの種類
ポイントサービスは大きく「自社(独自)ポイント」と「共通ポイント」の二つに分けられます。中には自社ポイントと共通ポイント両方を取り扱っている企業もあり、消費者にとってはポイントの二重取りができるため、メリットが高く感じられます。ただし、企業側はその分原資負担が増加するため、慎重な応用が求められます。
自社ポイント
自社ポイントは、特定の企業が独自に発行するポイントです。顧客がこのポイントを利用することで、リピート率を向上させることが期待されます。ポイントを貯めることでお得感を提供し、顧客との接点を増やすことが可能です。また、顧客情報を収集・活用することで、よりパーソナライズされたアプローチができるようになります。
共通ポイント
共通ポイントは、複数の企業や店舗で共通して利用できるポイントです。代表的な例として、「Vポイント」や「楽天ポイント」、「dポイント」などが挙げられます。顧客がポイントを貯めやすく、使いやすいことから、再来店を促進しやすいのが大きな魅力です。ただし、オリジナリティを出しにくく、顧客情報の利用に制限がある点には注意が必要です。
自社(独自)ポイント |
共通ポイント |
|
---|---|---|
集客力 |
低い |
高い |
自由度低い |
高い |
低い |
導入コスト |
導入サービス次第 |
低い |
リピート率 |
高い |
低い |
差別化戦略 |
立てやすい |
立てにくい |
顧客管理 |
可能 |
一部可能 |
ポイント原資負担 |
自社負担 |
事業者に支払い |
ポイントサービス導入のメリット
ポイントサービスは、企業にとってリピーターを増やし、顧客のロイヤルティを高めるための重要な手法です。特に、現代の消費者は「お得感」を求める傾向が強く、ポイントの存在がお店選びに大きな影響を与えます。そのため、ポイントサービスを導入することで、顧客との関係性を強化し、ビジネスの成長に寄与するさまざまなメリットを得ることが可能です。以下に、ポイントサービスの主なメリットをご紹介します。
来店促進
ポイントサービスは、顧客に対して次回の来店を促すことに効果的です。顧客がポイントを貯めるために来店頻度が上がり、リピーターの増加が期待されます。たとえば、一定額のポイントが貯まると割引や特典が得られたり、会員ランクが上がったりするため「あと少し」で得られる価値に惹かれて再来店する傾向が強まります。
顧客情報の活用
ポイントサービスを通じて収集される顧客データは、顧客のニーズに応じたマーケティングに役立ちます。性別や年齢、購入履歴などをもとにした分析を通じ、ターゲットに最適化されたプロモーションや商品提案が可能です。これにより、顧客の嗜好に応じたコミュニケーションがとれ、顧客満足度を向上させつつ、購入を加速することができます。
LTV(顧客生涯価値)の向上
顧客が長期的にポイントを貯める仕組みは、LTV(顧客生涯価値)の向上に寄与します。継続的な利用を促すことで、1人あたりの累計売上が増加し、企業にとっても利益を最大化する結果につながります。ポイントサービスは、顧客と企業の間に継続的な関係を築き、顧客の「お得意様化」を実現するための有効な手段といえるでしょう。
他社との差別化
例えば、特定のサービスや商品にボーナスポイントや限定の交換特典を設けることで、顧客に特別感を与え、「お気に入りの店舗」という印象を持ってもらいやすくなります。競争が激しい市場環境の中で、ポイントサービスは顧客から選ばれる理由を作り、企業のブランド価値を高めることができるため、競争優位性を確保するための有効な施策となります。
このように、ポイントサービスの導入は来店頻度や売上向上だけでなく、顧客との長期的な関係構築や競争力強化にも大いに貢献します。
ポイントサービスをはじめるには
ポイントサービスを成功させるには、初期設定と運用準備をしっかり行うことが重要です。以下に、導入の基本ステップをご紹介します。
ポイントサービスの目的を明確にする
まず、ポイントサービスを導入する理由と目標を明確にしましょう。顧客のリピート率向上や売上アップ、顧客満足度の向上など、具体的な目標やKPIを設定すると運用方針が決まり、効果的な施策につながります。
ポイント付与ルールなどの運用内容を決める
ポイントサービスを導入する際には、単に「何円で何ポイント付与するか」だけでなく、以下のような運用ルールも検討する必要があります。
ポイントの還元レート
まずは「何円で何ポイント付与するか」ですが、これを「ポイント付与時の還元レート」といいます。よく目にする還元レートといえば、100円1ポイントまたは100円2ポイントあたりでしょう。そこに、10倍ポイント付与キャンペーンなどの施策を打ち出せば、顧客はよりお得感を感じて来店の動機が高まります。ただし、先述のとおり「ポイント原資」についても考慮した上でレートを決めることが必要です。
ポイント有効期限
ポイントの有効期限をどのように設定するのかも検討が必要です。有効期限には、最終利用日ごとに1年延長される「自動延長型」やポイント付与日から1年後に失効する「年度失効型」、キャンペーンで特別に付与された「期間限定」などの種類があります。これらの有効期限年数も自由に設定が可能ですが、1年としている企業が多いです。
ポイント利用方法
貯まったポイントを顧客にどのように利用してもらうのかも、あらかじめ設定する必要があります。利用方法として以下にいくつかご紹介します。
- 1ポイント1円として会計時に割引として利用
- 500ポイント500円分のお買い物券と交換
- 貯まったポイントごとに、グッズや商品と交換
- 他社の共通ポイントと交換
「貯めやすさ」や「使いやすさ」を考えて、最適な利用方法を設定しましょう。
ポイントカード(会員証)について
ポイントを付与するためには、会員証が必要になります。会員証を読み取り、金額に応じたポイントを付与します。ポイントカードには、紙やプラスチック製の物理カードのほか、スマートフォン上に表示させるデジタル会員証があります。
近年デジタル化が推進されているため、デジタル会員証が普及していますが、顧客層に高齢の方が多い場合は物理カードの併用も検討したほうがよいでしょう。
会員ランク設定
顧客の利用状況に応じて、プラチナ会員、ダイヤモンド会員、ゴールド会員などのランク設定をすることでリピート率や顧客満足度向上が見込めるのでおすすめです。
顧客の年間利用金額を算出して、それぞれのしきい値を決めていきましょう。
必要なシステムと設備を選定する
ポイントサービスの目的や運用方法の方向性が決まってきたら、導入するシステムを選びましょう。複数のポイントベンダーをピックアップし、必要な機能が備わっているのか、コストが見合っているのか、サポート体制は整っているのかなど自社に合ったサービスを選びます。また、データベースだけでなく、ポイントを付与するためには「端末」が必要になるため、レジのスペースに置けるのか、オペレーション動作に無理が生じないかなど細かい点も視野にいれて取捨選択していきます。
ポイントシステムの選び方については、関連記事を参考にしてください。
【ポイント管理システムって何?】導入のメリットからシステム選定のポイントまで徹底解説!
店舗スタッフへの周知と教育
最後に、店舗スタッフにポイント付与のルールや操作方法を周知し、トレーニングを行います。特に、通常のレジ操作に加えてポイント処理をスムーズに行うため、迷いなく対応できるよう指導を徹底しましょう。顧客からの問い合わせにも対応できるよう、基本的なルールや特典内容についても理解してもらうことが重要です。
ポイントサービスの具体的な運用イメージ
会計時のポイント付与・利用の流れ
ポイントサービスの基本的な流れは、会計時に会員証を読み取り、その場でポイントを付与または利用するというものです。会員証は物理カードだけでなく、スマートフォンのバーコードを利用するデジタル会員証も一般的です。会計の前に会員証の提示が必要な場合や、決済が完了したあとに、手動でポイントを付与する場合などシステムによって手順や運用方法が異なるため、導入しているシステムをよく確認しましょう。
取得した顧客データの管理と活用
ポイントサービスの運用では、顧客データの管理と活用が欠かせません。来店頻度や購買傾向を把握することで、個々の顧客のニーズに応じたプロモーションや新商品案内を提供でき、より的確なマーケティング活動を行えます。また、データ分析により、特定の顧客層に特化したターゲティングプロモーションを実施することも可能です。
キャンペーンやクーポンなどの実施
ポイントサービスと連携したキャンペーンやクーポン施策も、来店頻度や客単価の向上に効果的です。たとえば、ポイント倍増キャンペーンや、特定期間内の利用で次回使用できるクーポンを配信するなどが考えられます。こうした特典を通じて、顧客にお得感を提供し、継続的な利用を促進します。
定期的な効果測定と改善
ポイントサービスの効果を最大化するためには、定期的な効果測定が重要です。月に一度などの頻度で、顧客の利用頻度、購入金額、ポイント利用実績などを集計・分析し、サービスの現状を把握しましょう。これにより、顧客の動向を踏まえた新しい施策や改善策をスムーズに立てることができます。
ポイントサービス導入の注意点
一度始めるとすぐにはやめられない
ポイントサービスの突然の終了は、顧客の信頼やブランドイメージに悪影響を及ぼす可能性があります。貯めたポイントが無効になると顧客の不満が高まり、競合企業に流れることも考えられます。また、導入にかけたコストや時間が無駄になるばかりか、ネガティブな口コミが広まり、新規顧客獲得にも支障が出るリスクがあるため、長期的な運用を視野に入れることが重要です。
過剰なポイント付与による収益悪化のリスク
ポイント還元率が高すぎると、顧客満足を高める反面、利益を圧迫するリスクがあります。還元率をよく考えずに設定してしまうと、長期的にみてコスト負担が重くなり、売上を伸ばしても利益が出ない可能性も出てくるため、慎重に設定する必要があります。ポイント還元による影響を定期的に分析し、売上や顧客満足度とのバランスを維持することで、健全な収益を確保できるようにすることが重要です。
顧客データのセキュリティ対策
ポイントサービスで集まる顧客データには個人情報が含まれるため、データの取り扱いには高いセキュリティ対策が必要です。システムの定期的な見直しやアクセス管理を徹底し、不正アクセスやデータ漏洩を防ぐことが重要です。ポイントシステムのベンダーが、Pマーク(プライバシーマーク)を取得しているかどうかも確認したほうがよいでしょう。
まとめ
ポイントサービスは、顧客のリピート率を高め、売上向上につながる強力なツールです。しかし、導入にあたっては自社の目的に合ったシステム選びや適切な運用が重要です。過剰なポイント付与による収益悪化や顧客データのセキュリティ管理など、注意すべき点を踏まえつつ、効果的なポイントサービスを展開することで、顧客との長期的な関係を築くことができます。